カテゴリ: 創業ノート

考えていることを、そのまま。

  • AI実務を、丸投げしなかった。

    AI実務を、誰かに任せようとした。

    競合が「AI導入支援」を掲げ始めた。価格は半額、
    納期は3分の1。焦った。社内にAI人材はいない。
    ChatGPTは触ったが、業務に組み込む方法が分からない。コンサルに相談すれば、答えが出ると思った。

    3社から提案が来た。どれも
    「貴社の業務フローをヒアリングし、最適なAIソリューションを設計します」
    と書いてある。月額80万円から。導入までに4ヶ月。
    成果物はレポートとダッシュボード。

    違和感があった。彼らは、私たちの業務を知らない。BPOの現場で何が起きているか、顧客が本当に求めているものが何か、知るはずがない。
    ヒアリングで拾えるのは表層だけだ。
    任せた瞬間、私たちは当事者でなくなる。

    データ分析aiを実務に活かすデータドリブン思考は、
    手を動かさないと身につかない。

    提案書には「データドリブン経営」と書いてあった。
    既存業務をログ化し、AIで分析し、改善提案を出す。
    聞こえはいい。
    でも、誰がログを見るのか。誰が改善を実行するのか。
    外部のコンサルタントではない。結局、私たちだ。

    ならば最初から、自分たちで触るしかない。
    代表の私がCursorを開いた。コードは書けない。
    でも、プロンプトなら書ける。
    業務フローは誰より知っている。
    顧客の要望も、オペレーションのボトルネックも、全部頭に入っている。

    最初に作ったのは、請求書の自動分類スクリプトだった。
    Claude Code APIを叩き、月に200件来るPDFを取引先ごとに振り分ける。
    週末に6時間かけて動くものができた。精度は70%。
    でも、人がやっていた3時間の作業が15分になった。

    この70%という数字を、外部のコンサルは出せない。
    なぜなら、彼らは実際に請求書を見ていないからだ。
    データ分析aiを実務に活かすデータドリブン思考とは、数字を眺めることではない。
    自分で手を動かし、失敗し、精度を体感することだ。

    体現しなければ、体験を提供できない。

    AI活用を掲げる競合に勝つ方法は、同じようにAIを導入することではなかった。
    私たち自身がAIを使い倒し、その体験を顧客に提供することだった。

    翌月、顧客向けの提案資料を作った。
    「弊社では代表がCursorで週次レポートを自動生成しています。御社の業務フローに合わせ、同じ仕組みを3日で構築します」
    と書いた。コンサルの提案とは真逆だ。
    ヒアリング4ヶ月ではなく、プロトタイプ3日。月額80万ではなく、初期費用20万。

    顧客は驚いた。
    「本当に代表が作っているんですか?」
    と聞かれた。Slackのスクリーンショットを見せた。深夜2時のコミット履歴、エラーログ、プロンプトの試行錯誤。全部そのまま見せた。

    受注した。理由を聞くと、
    「あなたたちは、自分で使っているから信用できる」
    と言われた。机上の空論ではなく、実際に手を動かしている人間の言葉には、重みがある。体現することでしか、体験は提供できない。

    AI人材を雇うのではなく、創業者がAI人材になる。

    ai実務を外注しなかった理由は、もう一つある。採用コストだ。AI人材を雇えば、年収800万は下らない。
    5名のチームには重すぎる。
    でも、創業者が手を動かせば、追加コストはゼロだ。

    ChatGPT Plusで月20ドル、Claude ProとCursor Proを足しても月60ドル。年間7万円程度。
    この投資で、粗利率は30%から48%に上がった。
    オペレーション時間が半減し、少人数で回せる案件が増えたからだ。

    人手に依存する構造から抜け出す方法は、人を増やすことではなかった。創業者自身がツールを使い倒し、仕組みを作り、それを顧客に見せることだった。AI実務とは、誰かに任せるものではない。
    自分で体験し、失敗し、小さく成果を出し続けることだ。

    ジレンマは残っている。既存の受託モデルと、AI中核設計は矛盾する。でも、手を動かし続ける限り、道は見える。矛盾を抱えたまま、進むしかない。

  • ジレンマを、抱えたまま進む。

    ジレンマとは、選べない構造のことだ。

    新規事業部の会議で「AI内製支援」の提案をした。既存の受託開発モデルとは真逆の方向だった。少人数で速く安く作る。多重下請け構造を経由しない。顧客が求めているのは、明らかにこちらだった。

    でも、既存事業部門は賛成しなかった。当たり前だ。彼らのビジネスモデルを否定することになる。工数積算で利益を出してきた構造を壊すことになる。どちらが正しいかの問題ではない。どちらを選んでも、何かが壊れる。それがジレンマだ。

    「顧客のため」という正論を振りかざしても、組織は動かない。利益相反を抱えたまま、前に進む方法を探すしかなかった。

    矛盾を解消しようとして、止まっていた。

    最初の半年、私は社内調整に時間を使った。既存部門の部長を説得しようとした。役員会で何度もプレゼンをした。資料を作り直し、数字を並べ、ロジックを磨いた。

    何も変わらなかった。会議は続くが、決まらない。「検討します」と言われて終わる。矛盾を解消してから進もうとしていたから、永遠にスタートできなかった。

    ある日、部下の一人が小さなプロトタイプを作ってきた。Claude Codeを使って、週末に一人で仕上げたと言った。既存の提案なら3ヶ月、300万円かかる案件だった。それが、二日で形になっていた。

    矛盾は解消されていない。でも、手を動かした人がいた。その事実が、何よりも強かった。

    組織を変えるのではなく、自分たちが動く。

    ジレンマを抱えたまま、できることをやる。それが私たちの答えになった。

    社内承認を待たずに、小さく作る。CursorとNotionだけで要件を固めて、一週間でデモを出す。顧客に見せて、反応をもらう。その繰り返しで、実績を積む。既存部門を説得するのではなく、別のルートで成果を作る。

    半年後、既存部門から「一緒にやらせてほしい」と言われた。説得したわけではない。成果が先に見えたから、彼らが動いた。矛盾は残っている。でも、前には進んでいる。

    ジレンマは消えない。消そうとするから、止まる。抱えたまま動くから、道ができる。

    熱量は、矛盾の中から生まれる。

    組織の中で新しいことをやろうとすると、必ずジレンマに直面する。既存のやり方と新しい方法。短期の利益と長期の変革。どちらも正しくて、どちらも選べない。

    その矛盾に耐えられるかどうかが、分かれ道だと思う。正論で押し切ろうとすると、組織は硬直する。矛盾を無視して突き進むと、孤立する。どちらでもない道を、自分の手で作るしかない。

    私たちは今も、ジレンマの中にいる。でも、手は動かしている。Slackには毎日コミットの通知が流れる。深夜2時のプルリクエスト。週末に書かれたドキュメント。矛盾を抱えた人たちが、それでも作り続けている。

    その熱が、組織を少しずつ溶かしていく。正論ではなく、手を動かした事実が、道を開く。ジレンマは消えない。でも、進むことはできる。

  • リスティング広告を、任せられなかった。

    上司から「リスティング広告をやれ」と言われた。代理店3社から提案を受けた。違いが分からなかった。社内に知見がない。丸投げするしかない。そう思った瞬間、何かが間違っている気がした。

    提案書は、全部同じに見えた。

    3社から届いた提案書を並べた。どれも30ページを超えている。運用体制、レポート体制、過去の実績。書いてあることは、ほとんど同じだった。

    違うのは月額の手数料と、担当者の肩書きくらい。どれを選べばいいのか、判断する材料がない。社内には広告の知識を持つ人がいない。だから、選ぶ基準も持てなかった。

    結局、「お任せします」と言うしかない。それが普通だと思っていた。

    任せた瞬間、見えなくなるもの。

    代理店に任せると、中身が見えなくなる。

    レポートは毎月届く。クリック数、インプレッション数、コンバージョン数。数字は並んでいる。でも、なぜその数字になったのかは、書いていない。

    「今月はCPAが改善しました」と報告される。何を変えたのか聞くと、「キーワードの入札調整と広告文の最適化です」と返ってくる。それ以上は、聞けない。聞いても、たぶん分からない。

    任せた瞬間、自分たちの事業から広告が切り離される。それが、外注の構造だった。

    決めるべきは、誰が手を動かすかではない。

    代理店に任せるかどうかは、本質的な問いではなかった。

    本当に決めるべきは、自分たちが広告を理解するかどうか。どのキーワードで誰に届けたいのか。どんな言葉で自社を語るのか。それを、自分たちの言葉で言えるかどうか。

    AIは、その構造を変えた。

    広告文を書くのも、キーワードを選ぶのも、入札を調整するのも、すべて対話でできる。専門知識がなくても、考えたことをそのまま形にできる。代理店を挟まなくても、手を動かせるようになった。

    外注するかどうかではなく、理解するかどうか。それが、分かれ目だと思う。

    任せる前に、一度手を動かしてみる。

    リスティング広告は、難しくない。難しく見えるのは、専門用語と管理画面の複雑さだけだ。

    AIと一緒なら、その壁はほとんどなくなる。「こういう人に届けたい」と話せば、キーワード候補が出る。「こういう強みを伝えたい」と言えば、広告文のたたきができる。

    一度でも自分で手を動かすと、代理店の提案書の意味が分かるようになる。何を任せて、何を自分たちで持つべきか。その線引きができるようになる。

    任せるにしても、理解した上で任せる。それだけで、関係は変わる。

  • 手を動かす人に、戻れた。

    私は長年様々な種類の”ディレクター”をやってきた。
    AIと一緒に手を動かすようになって、
    自分のことを「クリエイター」と言えるようになった。

    それまでずっと、言えなかった。


    人にお願いする仕事


    ディレクターという仕事は、基本的に人にお願いする仕事だ。
    デザインはデザイナーに、コードはエンジニアに、
    コピーはライターに頼む。
    私の仕事は「何を作るか」を決めて、つなぐことだった。

    ものづくりが好きでこの仕事を選んだのに、
    自分の手からは何も生まれない。そういう感覚がずっとあった。「ディレクターです」と名乗るとき、
    どこかに後ろめたさがあった。作ってるのは私じゃない、という感覚。

    クリエイターを名乗るのは、
    実際に手を動かしている人の特権だと思っていた。


    手を動かす、という感覚が戻ってきた


    AIに頼むと、構想がそのまま形になる。

    「こういうランディングページを作りたい」と話すと、
    たたきが返ってくる。
    「コピーをもう少し直球にして」と言えば、
    その場で書き直す。デザインも、コードも、
    文章も、自分で粒度を決めて手を入れられる。

    人に頼んでいた頃の、伝言ゲームの遅さがない。
    仕様書を書いて、レビューして、修正依頼を投げて、待つ。
    あの長い時間が、ほとんどゼロになった。

    ものを作る速度より大事なのは、ものを「作っている」という感覚だと思う。
    自分の判断が、その瞬間に出力に反映されていく。手から離れない。

    肩書きの中身が変わった

    今は、迷わず「クリエイター」と言える。

    肩書きは変わっていない。ディレクターのままだ。
    ただ、その中身が変わった。
    何を作るか考える人と、つくる人。
    それが同じ人間になった。

    AIは私たちを置き換える存在ではなく、
    私たちの手を増やしてくれる存在だ。
    少なくとも、私はそう感じている。

  • 考える人と、つくる人。

    AzRun に肩書きはほとんどありません。コンサルタント、エンジニア、マーケター、そういう分け方はしていない。考える人が、そのままつくる人になる。それが、私たちの組織のかたちです。

    理由はひとつです。事業を変えるのは、いつも実行だから。

    「決めた人」と「やる人」を分けない

    会社の規模が大きくなると、決める人とやる人が分かれていきます。
    決めた人は、現場の細部を知らない。
    やる人は、なぜそれをやるのか分からない。
    間に書類が増えて、伝言ゲームが始まる。最初に決めたことは、
    現場に着く頃には、ずいぶん別物になっている。

    私たちはこの構造を、最初から組み込まないことにしました。
    商談に出る人が、設計を描き、コードを書き、運用まで見る。
    判断と実行のあいだに、人を挟まない。

    それが成り立つ条件は、AI だけだった

    ひとりがコンサルから開発、運用まで担当すると言うと、
    たいてい怪訝な顔をされます。普通の前提なら、無理です。
    一人の人間の出力には限界がある。

    でも、AI は前提を変えました。
    コードを書く速度、調査の速度、ドキュメントの速度、どれも数倍に伸びる。
    一人で見られる範囲が、明らかに広がる。

    AzRun は、この変化を組織のかたちに落とし込んでいます。

    考える人が、つくる人になる

    外注の構造から離れると、面白いことが起きます。判断のスピードが速くなる。
    決めたその日に動ける。試したいことを、書類でなくコードで確かめられる。

    結果として、お客さまの体感も変わります。
    「相談したら、来週には動いていた」
    と驚かれます。
    それは、考える人と、つくる人が、同じ人だからです。

    AzRun は、人を増やしません。
    代わりに、ひとりの出力を、AI と組んで何倍にもしていく。
    少人数のまま、判断と実行の距離を、ゼロに近づける。
    それが、私たちのやり方です。